2017年12月11日
中国・アジア
企画室長
小長 高明
気がつくともう12月だ。今年を振り返ってみると、どんな1年であっただろうか。今年の「新語・流行語大賞」には「忖度(そんたく)」「インスタ映え」が選ばれたが、ビジネスでは「働き方改革」が今年1年を象徴していたのではないかと思う。キーワードだけが先行し、どう改革するのか、そもそも課題は何なのか、何をすれば達成なのか...。先が読みにくい時代に突入して、どんなセミナーに参加しても「解」を求める人たちでにぎわっていた。
リコージャパンでも、海外、特に中国やアジア諸国に拠点をお持ちのお客さまに対し、オフィスの困り事や働き方に関するセミナーを実施している。私は、11月7日に行われた「アジアフォーラム2017」に参加する機会を得たのでのぞいてみた。
そこには「海外拠点の生産性が上がらない」「海外拠点からの情報漏洩等セキュリティ維持に心配がある」「もっと海外拠点とのコミュニケーションを活性化させたい」など、さまざまな悩みを抱えていらっしゃる日系企業のお客さま約50人のご担当者が来場されていた。
このような課題に対する相談は、毎日、ご担当者からリコージャパンに寄せられ、年間で1000件以上にも上る。地域別にみると、8割強がアジアの問題であり、そのうち3割強が中国拠点に関する何かしらの悩みが占めている。
(出所)リコージャパン
そこで今回のアジアフォーラムでは、中国でビジネスの指揮を執っていたリコーの清水潔執行役員が、「中国ビジネスの魅力とリスク」というタイトルで講演。中国(上海、深圳)で活動をしている営業メンバーも来日し、自らの声で具体的な課題解決案を提示していた。ご来場者には何からのヒントになったに違いない。
リコーは世界約200カ国・地域に販売チャネルを持っていて、それぞれの国のオフィス課題解決を提案している。しかし昨今、コピー機もネットワークに繋がり、IoTの流れの中で、オフィスの課題解決は1国にとどまらず、国境をまたいで解決していく時代になってきた。
私は、来日していた中国で日系企業を担当するリコーの営業マン张向辉 (Oscar)さんと俞凌杰 (Roger)さんに時間をもらって、最近の中国における日系企業の動向や彼らの関心事について、ざっくばらんに聞いてみた。
彼らは、「2016年以降、生産設備系の投資が多くなった。地下鉄等のインフラ整備も盛んでGDPを押し上げているけど、潤っているのは国有企業だけ。日系企業はそう伸びていない」と指摘した上で、「景気はいいし、個人の平均所得も上がっているが、実際には貧富の差はまだあり、一部の富裕層が更に潤っているだけのようにも感じている」との不満も。その根拠を尋ねると、「私たちは決して貧しくはないが、政府が示す平均以下だからだ」と打ち明けてくれた。
だからかもしれないが、いい待遇を求めて中国人は転職することに迷いはないという。2年から3年の間には転職してしまうケースがほとんどだ。雇う側から見れば、中国系や欧米系の企業は、「人材は育てる」というより「見つける」という感覚があるそうだ。例えは悪いが、中国は人口が多いから魚を釣るイメージだという。日系企業については、人を育て長く勤めてほしいという気持ちは伝わってくるが、それでも転職されているケースが少なくない。
中国人の職業観には、一人っ子政策も影響しているとみる向きもある。マイペースに育った子供が多いため、会社での居心地が良ければ仕事は続けるといった気分に左右され、何かのきっかけで転職してしまうという。
ところが、話を聞くうちに、张さん、俞さんの2人は、6年前後リコーチャイナ(RCN)に勤めていることが分かった。そこで、なぜ長続きできているのかと尋ねたところ、「チームで仕事がうまくできている」「部門間の連携には課題を感じているが、私と会社の一体感が強い」と返してきた。一体感とは?とさらに聞くと「仲間が自分の家族に思える」と胸を張って答えてくれた。
その言葉に私はハッとした。リコー4代目の浜田広社長が「仕事とは、相手へのお役立ちである。相手の役に立つにはどうすれば良いのかという工夫を積み上げていくことで、1人でやることに限界はある。会社とは『社員みんなで創り上げていく壮大な作品』だ」と語っていたことを思い出した。
インターネットで世界中がつながる時代、グローバル化の進展で変化を見通すことが難しい時代である。しかし、どんな時代になろうともお役立ち(仕事)は仲間と一緒に協力していくものだと、改めて中国で働く仲間から教わった気がした。
流行語ではないが「35億分の1」の確率で、縁あって出会った2人だ。決してインスタ映えしない写真かもしれないが、大切に保管して、時々連絡を取り合えればと思う。
左から俞凌杰 (Roger)さん、筆者、张向辉 (Oscar)さん
小長 高明